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◾︎朝8:50。改札をすり抜けてちょっと先。いつも決まった時間に決まった場所ですれ違う女性がいる。黒髪ロングで無表情、服もなんだか無頓着でださい。彼女とすれ違うたび、百貨店の匂いがする。正確に言うなら、プレゼントを包む包装紙の匂い。コードネームTakashimaya。小さな頃、特別な用事やお祝い事があると、必ず両親が百貨店へ連れてってくれた。そこのフードコートで食べる、やっすい醬油ラーメン、形整わないソフトクリーム、溢れ出しそうなポップコーン。どこにでもある味なんだけど、百貨店マジックで特別なごちそうに思えた。お腹も胸もいっぱいになって、それだけでも嬉しいのに、新品のワンピース、流行りのおもちゃも買ってもらえた。
彼女とすれ違う朝の数秒で、あの、バラの花が誇らしげに咲く、つるつるの包装紙に包まれた箱をぎゅっと抱きしめて家路を急いだ幼い頃の気持ちをインストール。その数秒が私をすぐにセンチメンタルにさせる。