いつだって窓際であたしたち

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■通勤ルートを変えた。特に深い意味はない、気分を変えたいからっていう軽い理由。

 

毎朝決まった時間にすれ違う、百貨店のひととは顔をあわせなくなり、いまは高校の前を通過するのが日課。チャイムが鳴るのに合わせて、正門に向かって坂を駆け上がるような、朝のせわしない騒々しい感じも好きだけど、気だるい心地よさをまとった放課後の雰囲気のほうが好き。

 

自転車を立ち漕ぎしながら、「好きな人と〜運命の〜」と満面の笑みで恋の予感を鼻歌で口ずさむ男子高校生…正門を出た瞬間、ほどほどの長さに揃えてたスカートをくるくると短めに巻き、濃いめのリップをさっとひきなおす女子高生…。

 

彼ら彼女らの弾む声を耳にすると、教室の窓からはみ出した、はたはたと風に揺れるカーテンに、汗と混じってふんわり香る甘いレモンの制汗剤などなど、遠い過去に置いてってしまった、あの甘酸っぱい気持ちたちが炸裂。胸からはみだしたこのふぞろいな気持ちは、真珠のネックレスが解けたように、道端に散らばっていく。時は勝手に過ぎてっちゃうな。そうやっていつも実感し、家路を急ぐのだった。