春爛漫

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◼︎どうしてもモノレールに乗りたいという強い信念から、朝6時の始発まで24時間営業の食堂で時間を潰してるのだが、たった今、頼んだ覚えのない店員の電話番号が紙に書かれて運ばれてきました。「良かったら友達になってくださいBy金髪Okinawaボーイ」とのこと…さて私はどうしたらいいのでしょうか?

なんて聞いたところで答えてくれる人がそばにいるわけでもなく、ましてや最適な答えを授けてくれるような私のなかに眠る別人格がいるわけでもない。ひとしきり考えた後、このままここにいるのも申し訳ないな…と思い、いただいた電話番号の書かれた紙を丁寧にたたんで隅に置き、荷物を持って立ち去ろうとすると、卓上からカタンと音がする。

「僕からのサービスです」目の前にはグラスに注がれたアイスコーヒー。おいおい、いま私はとても喉が渇いているぞ。のむ?のんだらもう少しここにいることになるよ?席を立つほうがスマートじゃない?いやいや礼儀知らずじゃない?のまないのはないでしょ?

急に私の脳内でざわめき出す自問自答。

こっちを向いたストローをくっと唇に寄せてひとくち。もう少しだけここにいることを意思表示すると、金髪Okinawaボーイは生ビールのジョッキを持ち、私の向かいに座った。

真夜中の食堂で見知らぬ男の子と会話。なんだこのロマンチックな状況。この世界に2人しかいないみたいだね?なんてチープな永遠を語り合うには匹敵の丑三つ時。でも全然ときめかねぇ。なぜなら私は眠い。そして、それを妨げる金髪Okinawaボーイの前のめりな姿勢。

「あなたが食べたステーキ、僕が焼きました。おいしかったでしょ?」「いま彼女いません」「一人暮らしは寂しいでしょ?一緒にのみにいきませんか?」

夜中にステーキ食べるなんてデブの怠慢だ、と言わないでいてくれる器の大きさは大いに評価したいけど、手に取るようにわかる好意。本来、女性に生まれたならいわゆるこのナンパという状況に対し、喜ぶべきなのだろうけど、なんかもう全然嬉しくない。

昔からそうなのだが、人にものすごく好かれると不安になってしまう。なんで?どこがいいの?私よりもっといい人いるんじゃないの?ってそう思ってしまうからだ。友達にこういうこと言うと「絶対幸せになれないタイプだね」って言われる。うん、私もそう思いたくないけど、そんな気がしてる。

だから、目の前の積極的な彼にたじろぐ。いつかは、こんなにまっすぐな愛情を疑うことなく受け入れられる日が来るのでしょうか?そう思っているうちにモノレールの時間が迫って来る。

「お気持ちだけは受け取っとくんで!またいつかどこかで会いましょう!」そう言い残し、扉を開ける。まだ暦の上では春なのに、明らんだ空からは初夏の匂いが運ばれて来る。

街が明るくなるのにあわせて、どこか気持ちも明るくなる。モノレールはもうやって来る。私は足を少し早めて駅へ向かった。