いつだって窓際であたしたち

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■通勤ルートを変えた。特に深い意味はない、気分を変えたいからっていう軽い理由。

 

毎朝決まった時間にすれ違う、百貨店のひととは顔をあわせなくなり、いまは高校の前を通過するのが日課。チャイムが鳴るのに合わせて、正門に向かって坂を駆け上がるような、朝のせわしない騒々しい感じも好きだけど、気だるい心地よさをまとった放課後の雰囲気のほうが好き。

 

自転車を立ち漕ぎしながら、「好きな人と〜運命の〜」と満面の笑みで恋の予感を鼻歌で口ずさむ男子高校生…正門を出た瞬間、ほどほどの長さに揃えてたスカートをくるくると短めに巻き、濃いめのリップをさっとひきなおす女子高生…。

 

彼ら彼女らの弾む声を耳にすると、教室の窓からはみ出した、はたはたと風に揺れるカーテンに、汗と混じってふんわり香る甘いレモンの制汗剤などなど、遠い過去に置いてってしまった、あの甘酸っぱい気持ちたちが炸裂。胸からはみだしたこのふぞろいな気持ちは、真珠のネックレスが解けたように、道端に散らばっていく。時は勝手に過ぎてっちゃうな。そうやっていつも実感し、家路を急ぐのだった。

世界の果てまで連れてってね



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■ことしの夏は、水着をきて、海いったりプールいったりしてみたいな。子どもの時にいったきりで、いったことない。

水着は猛烈に恥ずかしい服装だとおもっている。銭湯と温泉は裸になったとしても、女性しかいないから大丈夫!という謎の自分ルールがあるので、平気なんだけど。水着をきて出かける場所には、だいたい男性がいて、かなり恥ずかしいし、しかもこの丸い身体を見せてしまい公害問題じゃんか…という気持ちがむくむく膨れて、どうも楽しめない。

だけど、ことしの夏はその気持ちを克服しよう、ってことで、がんばってダイエットをし、誰よりも!夏を!楽しく!すごしたいな〜〜という所存です!

■人と関わりを持つ過程のなかで、いつもコンプレックスに思っている、とあるちっちゃい悩みがあるのだが、たまたまお酒を飲みに行った同僚に話したら、「そんなん数こなして乗り越えてくしかないでしょ!」と言葉をいただき、いやぁ確かにそうですわぁと納得。コンプレックスにとらわれているあいだは、相手に向き合えてないってことだもんな〜。

テクマクマヤコン

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「あーちゃん!まだ?ねえ、まだなの?」
 
うんうん、わかった。あと少しだから。このボタンをつけたらもうおしまいだから…。よし、オッケー!
 
バッ!とカーテンを開けると、少し不貞腐れたアイちゃんが腰に手を当て、カッと睨みつけてきた。
 
 
 
 
 
 
アイちゃんは小学校のときの後輩。ある時、前の上司と買い物に来た…という思い出だけしかない、なんの思い入れもないアパレルショップへ、時間があったからふらっと寄ったら、店員として居たのだった。そこから付き合いが始まった。
 
「あーちゃんさ、なんでこんな色のタイツ履いてんの?」
 
ん?洗濯が済んでるものから履いてるんだけど、今日はこれだったの。
 
「ありえない!!こんな学芸会みたいなタイツ!あとさ、スカートいつのシーズンの?これ冬の生地!夏だから、これとこれとこれ着て!」
 
手いっぱいのお洋服を持たされ、どんどん背中を押され、フィッティングルームへ。
 
「いい?これ着るまで出ちゃだめだよ?わかった?」
 
はーい。
 
腑抜けたマヌケな返事が、フィッティングルームのカーテンに吸い込まれる。
 
こんな派手なピンクなんて似合わない。こんなの着れっこない。アイちゃんのばか。私はTシャツにハーフスカートが好きなんだ。こんな服なんてCamcanとかエビちゃんとかが着るんだよ。
 
そう思いながらも、結局はいうことを聞いてしまう。
 
「あーちゃん!まだ?ねえ、まだなの?」
 
あ、呼んでる。カーテンの向こうでアイちゃんが苛立っている。声でわかる。
 
あと少しだから。このボタンをつけたらもうおしまいだから…。よし、オッケー!
 
バッ!カーテンを開けると、少し不貞腐れたアイちゃんが腰に手を当て、カッと睨みつけてきた。
 
「おそい!」
 
ごめん。もたもたしてた。
 
「なにもたもたしてんの?っていうか超いいじゃん!やっぱりぴったり!私ってほんとに天才!しかも、あーちゃんの肌の色にピンク合うじゃん。ちょーかわいいよ。これで仕事いきなよ。今履いてるだっさいスカートやめなよ。私のセンスにまかせてよ、ね?」
 
おい、ダサいっていうな。このスカートも気に入って買ったの。
でも、なんだか嬉しい。普段からあんまりにも歯に衣着せないから、褒め言葉も素直に心から出てきたもんなんだろうな、となんの疑いもなく受け入れられた。こんな可愛い服、一生着ないと思ってた。知らない自分を知っていく、不思議な感じ、なんだか心地いいな。
 
ダサいダサいと言われながらも、気づけば、アイちゃんのお店に通うようになった。
 
フィッティングルームは、少しだけ欲望に素直になれる小さな秘密部屋。カーテンを開けたら、少しだけ強くなれた気がした。

タイムマシンはこない

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■古くからの友人と話していると、過去にどんな考え方をしていたか、どんな感情を持って暮らしていたか、振り返る良いきっかけになることが多い。この連休は、懐かしい人たちにたくさん再会した。

■今日、つい1年前まで大喧嘩をしてた友達に会った。喧嘩してたこととかすっかり忘れてたし、というか今日会う前にも何度か会ってるのに、なんで今になって喧嘩してたこというんだ。まあいいや、私すっかり忘れてたし。そんな友達とお酒を飲み飲み、好きな映画の話を3時間ぐらいした。

「やっぱりね、喧嘩したりいろんなことがあっても、最終的にはあやこちゃんに会いたくなる!」と突然酒場で告白され、普段慣れないことにあたふたして、「お、おう!サンキューな」と割と無愛想で男前な返答をしてしまった。

この数日、日中は頬が火照るほど暑いのに、日が暮れると、すーっと涼しい風が駆け抜ける。ほろ酔い状態でとぼとぼ歩く。

「夜はやっぱり寒いね〜、こういうハッキリしない天気きらい〜」『そーだね〜、でも昼間より過ごしやすくていい!好きだなぁこの季節!』なんて、いくら時を経ても、他愛ない会話ができる関係性って素晴らしいなー、友達サイコーだなぁと感動。

どんなに仕事が忙しくなっても、たとえこの先、生活が変わったとしても、普通の会話をずっとしていきたいし、私は普通の会話を愛してる!

人にやさしく

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「自分の人生っていまどこらへんだと思う?」

『あ、あと何年ぐらい生きるか想定してってことですか?』

「そうそう。」

『うーん、80歳まで生きるとしたら、まだ序盤かなぁ。季節でいうと、ちょうど今ぐらい。初夏。もうすぐで夏に差し掛かるぐらい?』

「初夏か〜。面白い表現だね。」

『あ、いま馬鹿にしたでしょ。ずっと笑ってる。』

「いや、そんなことないよ。初夏ね。でもさ、突然今日死んじゃうこともありえるからね。いつだって寿命は、あるようでないようなものなんだろうな。」

『えーっ。なんか急に孤独になる!不安になるからやめて!』

■いつか訪れる死のことを考えると、孤独な気持ちになる。孤独を思うと、動物園で飼い慣らされている動物たちに思いを馳せてしまう。

たとえば遠い砂漠から、ひとりしょっぴかれたライオン。言葉も通じない日本にたったひとりでやってきて、死ぬまで自分の生活をよそのひとにさらされ続ける。異文化コミュニケーションは少しばかり信じてるたちだから、言葉は通じないものの、飼育員とはボディランゲージや表情で多少は心通うかもしれないけど、大好きな誰かを想って恋バナしたり、お酒を飲み飲み好きな物事で熱く語り合って朝…とか、阿吽の呼吸で会話できる人はなかなか見つからないまま、死んじゃうんだろうな…。

なんて動物園内で想像すると、猛烈に焦燥感に駆られる。隣で子どもたちがはしゃいでるのを尻目に、動物の目を見て、孤独について思いを馳せちゃう。って言いつつも、周りの無垢な多幸感に染まって、自分も楽しくなっちゃうんだけど。

■百合の花の匂いを嗅ぐと、無条件で死を連想する。もう花が落ちんばかりに熟れたときにする、気が狂いそうなほど甘ったるい洗練された匂いを嗅ぐと、しめやかなお葬式を思い出すから。うちの庭にいくつか植えてあり、この季節がやってくるたび、百合の匂いに心がふと持ってかれる。

■まだまだ死にたくないな。